田舎に定住する前に週末移住を考える
いきなりですが「移住と結婚って似てるな」と考えたことはありませんか?
両方とも、やってみなければ上手くいくか分からない。でも、いきなり移住や結婚するのは勇気がいりますよね。
「週末婚」という言葉があります。1999年に放送されたドラマでも出てきましたが、週末婚とはもともと、子連れで再婚をする人が「子どもにとっていい環境を作れるか?」と試す意味で行われていたもの。
「平日は別居、休日のみ同居する」するという夫婦のスタイルをいいます。
この方法を移住で行うことはできないでしょうか。いわば「週末移住」です。
実は、いろいろな所で週末移住の試みは行われており、それは二地域居住や交流居住、デュアルライフとよばれています。
週末移住とは二地域居住・交流居住・デュアルライフ
平日 休日
利便性の高い都市部で仕事 リラックスできる田舎で生活
国交省の「二地域居住」都会でも田舎でも暮らす
国土交通省では、都市住民が農山漁村などの地域にも同時に生活拠点を持つ「二地域居住」を推奨しています。
これは、すべての地域で定住人口を増やすことはできないので、二地域居住により過疎地域への人の誘致や移動を図って経済を回していこうという考えです。
「二地域居住」は、地方活性化を視野に入れた、多様なライフスタイルを確立しやすい施策です。
総務省でも「交流居住」として週末移住を推進
総務省でも週末移住を推進しています。その名は「交流居住」。仕事や教育等の日常生活は都市部で行いながら、余暇時間の多くを田舎で過ごすというものです。
滞在拠点は、戸建て住宅(賃貸、持ち家)やリゾートマンション、湯治用温泉旅館などを利用した期間限定の移住で、「週末に都市部と田舎を往来するタイプ」と「避暑・避寒・療養のように滞在期間が1~3ヶ月程度、往来頻度はそれほど多くないタイプ」が考えられています。
「交流居住」は、田舎での取り組みが比較的容易であると同時に、地域に多面的な効果と可能性をもたらす施策です。
週末移住は「デュアルライフ」ともよばれている
近年では、生活拠点が2つ以上ある生活を「デュアルライフ」、それを楽しむ人は「デュアラー」とよばれ、20~30代の2拠点生活者が増えているんです。
デュアルライフの特徴は、田舎での楽しみ方に重点を置いているところ。ふるさとが無い人や田舎に憧れている若者が、心のゆとりを求めてデュアラーになっているのでしょう。その楽しみ方はいろいろあります。
- 子どもの教育のため田舎に行き、自然に触れさせながら感性を伸ばしたい
- 海の近くの家を借り、週末になるとサーフィンを楽しみに行く
- いつかは田舎へ完全移住したいけど、やっていけるか不安。プレ農業から試す
というように、週末移住を満喫しています。これぞまさに週末移住ですよね。
「デュアルライフ」とは、「二地域居住」と「交流居住」と同じ2拠点生活を指します。都市部と田舎を双方向で行きかうライフスタイルの和製英語です。
しかし、これらは旅行でも出来ることなのではないでしょうか?
旅行と週末移住の違い
旅行はホテルや旅館、民宿、テントなどに宿泊して、非日常を楽しむこと。
広辞苑ではこう定義されています。
「住む土地を離れて、一時他の土地に行くこと。旅行。古くは必ずしも遠い土地に行くことに限らず、住居を離れることをすべて「たび」と言った」
つまり、住居ではない場所で過ごすのが旅行なのです。
二地域居住・交流居住などのいわゆる週末移住は、生活の拠点である住居を2つ以上持って、どちらでも生活をすることが前提です。
一時その場所に訪れる旅行とは違い、週末移住は生活拠点を置くことになるので、地元の人たちと交流を持ち地域に貢献することもできます。
都市部では「大勢の中の一人」でも、田舎では自分のスキルを活かして自分の存在意義を再確認できるかもしれません。
週末移住の多様なスタイル
一般的に週末移住は「平日に都市部で仕事して、休日は田舎でのんびりする」というイメージですが、実はいろいろな楽しみ方があります。
季節によって住居を変える「セカンドハウスタイプ」
繁忙期と閑散期の差が激しい仕事に就いている人は、まとまった休みがとりやすいかもしれません。そのような方におすすめなのが、中長期滞在型の移住です。
半月~1ヶ月くらいを田舎で過ごしながら、地元住民とコミュニケーションを図っていくことができ、生活パターンも築きやすくなります。
夏の暑い季節は移住地で過ごす、寒さが厳しい豪雪の季節は移住地で生活するなど、別荘のような感覚で一時的に移住するのがセカンドハウスタイプです。
都市部でも田舎でも仕事を持つ「二地域就労タイプ」
在宅の仕事をしている人は、住居はどこにあっても構わないでしょう。「都市部では打ち合わせなど人に会う仕事をこなし、作業は静かな田舎で行う」といったスタイルが代表例です。
- 普段は畑仕事、休みの季節は都市部で事業開発をする
- 都市部で事務のパート、田舎では観光ツアーのガイドをする
- 中長期の休暇の間だけ、田舎でイベントスタッフをする
このような働き方もあります。二地域就労には収入が増えるといったメリットのほか、コミュニティに馴染みやすくなるという利点もあります。仕事を通じて地域に貢献できれば、その地域に愛着も湧いてくるでしょう。
夫婦が別の住居で仕事をして休日になると 田舎で一緒に過ごす「三地域住居タイプ」
三地域住居タイプは、共働きの家庭であるDINKS夫婦などが実践しているようです。
私の知り合いにもいますが、夫は東京、妻は名古屋で働き、休日になると中間地点である静岡の家で過ごすというスタイル。1つの家族で3つの拠点を持っているということですね。
この夫婦の場合は、3拠点とも賃貸物件を借りています。共働きなので収入はそれなりにあるそうですが、維持費や交通費、留守宅の管理の問題も出てきます。何かの支援があれば、もっと移住の輪が広がるのではないでしょうか?
週末移住を実践している人の割合
- 20代 29%
- 30代 29%
- 40代 13%
- 50代 14%
- 60代 15%
- 400万円未満 16%
- 400万~600万円未満 18%
- 600万~800万円未満 18%
- 800万~1,000万円未満 14%
- 1,000万~1,500万円未満 20%
- 1,500万円以上 14%
- 20~30日未満 21%
- 30~60日未満 24%
- 60~90日未満 21%
- 90~120日未満 12%
- 120~180日未満 13%
- 180日以上 10%
- 1時間未満 17%
- 1~2時間未満 43%
- 2~3時間未満 18%
- 3~4時間未満 11%
- 4時間以上 12%
週末移住はデメリットもある!解決策は
週末移住は生活費がダブルになる
2拠点生活を始めるには、住む家を考えなければいけません。賃貸にするか思い切って購入してしまうか。そして、家の維持費もダブルになってしまうので、気軽には実行できないかもしれません。
例えば、都心部で2LDK:18万円の家賃を払い、田舎で5万円の家賃を払うと合計で23万円。そこに、家具の購入費や光熱費、食費、日用品などの雑費が加わります。移住地へ行くのに移動費もかかりますね。
移住候補地の家賃を知るなら「アパマンショップ」
サービスを利用してデメリットを解消
一定期間しか住まない田舎の家は、曜日を決めて仲間とシェアしたり、使っていない期間は貸し出しすることもできます。
民泊施設として活用するなら、清掃サービスや受付業務を代行してくれるサービスが便利です。
合法的な民泊運営を支援している「minpakuIN」
1時間単位で家や部屋を貸し出すことができる「SPACEMARKET」
週末移住者(二地域居住・交流居住)の支援
福島県の二地域居住・交流居住支援
福島県では、定住・二地域居住、被災者等の住宅再建を推進するため、県外からの移住者や被災者等が行う空き家改修等に対して補助金を支援しています。
【支援額】
県外移住者(子育て世帯) 最大250万円
被災者・避難者、上記以外の県外移住者 最大190万円
(内訳)
リフォーム費補助 最大150万円(工事費の1/2以内)
クリーニング費補助 最大 40万円
県外子育て世帯リフォーム・プラス補助 最大 60万円
北海道旭川市では期間限定の二地域居住を推進
北海道旭川市のNPO法人「グラウンドワーク西神楽」は、寒さの厳しい冬の期間、地域の高齢者が集まって生活をする場所を作りました。空き家となった民家を改修して行っている取り組みなので、新たに施設を作るより安く「高齢者の集住施設」を作ることができました。
この集住施設は冬季限定なので、夏季は避暑のための別荘や保養施設として活用されています。このように、期間を区切って貸し出しをしているので、一般的な賃貸物件よりリーズナブルに二地域居住生活を満喫することができるのです。
週末移住で田舎暮らしをイメージする
田舎で生活している若者は「都心に移り住みたい」と一度は思うかもしれません。実際に都会出てくると、都心の便利さを快適に感じる人もいれば、カルチャーショックを受け故郷に帰りたくなる人もいます。
そして、逆パターンもあるはずです。
都会から田舎へ行った人の中には、不便さに苦しむ人もいれば、広大な自然を満喫する人もいます。
「こんなはずじゃなかった」と嘆くのは、想像と現実のギャップが大きいからかも。
田舎の生活に不満を感じる人は、自分が理想とするイメージを膨らませ過ぎたのではないでしょうか?
私も「移住」という言葉に、魅かれ・憧れ・調べまくっていくうちに「本当に移住はいいものなのか?」という疑問にぶち当たりました。
しかし、頭の中だけで答えを求めていても解決しません。この答えを出すには、実際に移住してみるしかないのです。