田舎の人は知りたがり!?根掘り葉掘りは当たり前
移住すると、近所の人たちから質問攻めにあうことがあります。まるで、タレントがスキャンダルを起こした後に行う囲み取材のように……。
「どこから来たの?」「子どもは何人?」「親御さんはどこに住んでいるの?」と、ここまでは普通の質問だと思ってください。「お子さんはどこの学校に行ってるの?」「会社はどこ?」「あなたは大学を出ているの?」と、さらに突っ込んだ質問が続くでしょう。
この質問攻撃に都会から来た移住者は驚きます。実際に質問攻撃にあったAさんは、「なぜ、こんなことを話さなければいけないのだろう」と思い、話をはぐらかしたそうです。
夫婦2人で田舎に移住したAさんの場合

近所の人「お子さんは何人いるの?」

Aさん「2人です。両方とも県外にいますよ」
近所の人「では、夫婦だけの移住なのね。お子さんは学生?」
Aさん「1人は学生ですが、1人は結婚して家庭を持っていますよ」
近所の人「学生さんはどこの大学に行ってるの?」
Aさん「東京の大学なので、一人暮らししてます」
近所の人「そう、で、なんて学校?」
Aさん「〇〇大学です」
近所の人「Aさんご夫婦は、大学を出ているの?」
Aさん「(うわっ)ええ。それより、今日はいい天気ですね。お散歩ですか?」
近所の人「そうなのよ。またね」
この会話が午前中だったそうです。昼過ぎに庭へ出ていると、知らない人から声をかけられ「〇〇大学って、偏差値いくつ?」と聞かれたそうです。全く知らない人から、自分の子どもが通う学校の偏差値を尋ねられる不可解さと、プライベートな話題を人に話す近所の人に不愉快な感情を持ち、Aさんは田舎に越してきたことを後悔したそうです。
正直に近所の人の質問に答えたBさんの場合

近所の人「こんな田舎にどうして住むの?」

Bさん「広い庭が夢だったんですよ。気候が良くていい環境ですよね」
近所の人「お仕事は何をしているの?」
Bさん「建築エンジニアです」
近所の人「会社はどこにあるの?」
Bさん「ほとんど在宅で仕事しています。ときどき、クライアントに会いに行くだけなので」
近所の人「ハイカラなご職業なんだね。収入はどのくらい?」
Bさん「多くないですよ。サラリーマンと同じくらいです」
近所の人「1,000万くらい?もっと?」
Bさん「そんなに貰えないですよ」
近所の人「ハイカラな仕事なのに、収入低いの?」
Bさん「……そうですね」
ズケズケ聞いてくる近所の人に、非常識な印象を持ったBさん。「聞いてどうするんだろう?」と思いながらも、危機感を持ったそうです。
自分たちを「閉鎖的」という田舎の人々
田舎では「ここは閉鎖的な地域だから」と、自分たちのことを語ります。おじいちゃんやおばあちゃんが「新しいものについていけない」「変化は苦手」などといった、ネガティブな言葉を発しているのを耳にしたことがあるでしょう。
都会に住む人たちは、この言葉を聞いて「もっと便利になるのに」「楽に暮らせる方法を教えたい」と思うこともあるはず。しかし、田舎に住む人たちにとって、それは大きなお世話なのかもしれません。
昔からその地域で暮らしてきた人たちは、今までの生活を不便だと思っていないこともあります。それは、便利な生活を知らないから。
例えば、食器洗浄乾燥機やロボット掃除機などの家電は「使い方が分からないから怖い」といい、実際にプレゼントしても困惑するだけ。私の祖母がそうでした。ルンバを設置しても「こんなのは要らん!邪魔だ」と、今では置物のようになっています。

スマート生活なんて、未来の夢とでも思っているんだろうな……と、感じています。
話はそれましたが、田舎に住む人が自分たちのことを「閉鎖的」と話すのは、「今の生活を壊されたくない」と考えているからでしょう。不便はあっても何とかなっている生活、快適では無くても不快ではない環境、大きな変化がない穏やかな日々、これが「平和」だと感じているから。
新しいものや変化は、「今までの生活が脅かされるのではないか?」と恐怖心を抱かせるのかもしれません。
知りたいのは敵か?自分より優れているか?
昔からその土地で暮らしてきた人たちが知りたいのは、「新しく近所へ来た人は自分にとって敵になるのか?」ということ。それと同時に、優劣を見極めている節があります。
先に紹介したAさんは、子どもが通う大学の偏差値や夫婦揃って大学を出ていることから、「優」と判断されたようです。
野菜や果物などを頂くようになり、近所の子どもの学校選びなども相談されるようになりました。また、Aさんのスケジュールが合わない会合などがあるときには、Aさんのために日にちをずらすこともあったとか。
正直に答えたBさんは、なぜか「稼げない得体のしれない仕事」と吹聴されるようになり、居心地が悪い思いをしたとか。近所に住む人たちは、Bさんのことを「劣」と判断したのです。
「1,000万くらい?もっと?」「そんなに貰えないですよ」この受け答えで、低収入と判断されてしまったようです。バブル期なら1,000万円稼ぐエンジニアもいたかもしれませんが、今のサラリーマンの平均収入はもっと下。そのことを「閉鎖的」な人たちは理解しませんでした。
そして、Bさんが反省したのは、職種の説明に横文字を使ったこと。
田舎の人たちは「先に住んでいる自分たちのほうが偉い」という思いが根底にあります。「後から移住してきた人に舐められてはいけない」と思う気持ちもあるのでしょう。「知らないことは恥」と、考えているのかもしれません。近所の人は「エンジニアってなに?」の一言がいえなかったのでしょう。
在宅の仕事というのも、田舎の人たちに悪い印象を与えた原因かも。高齢者には、サラリーマンは会社へ行って仕事をするもの、という固定観念があります。家で出来る仕事なんてろくなものではない。と考えても不思議ではありません。
Bさんはエンジニアという言葉を使い、新しい働き方が浸透していなかったために、「得体のしれない仕事」という印象を与えてしまったのです。
受け答えは慎重に!「優」判定なら田舎は快適
田舎で快適に生活するには、仲間に入れてもらうことが大切です。その仲間に入るには、いろいろな審査をパスしなければなりません。近所の人からの質問攻撃は最初の審査だと思って、受け答えは慎重にしましょう。
個人情報が筒抜けになりやすい田舎では、話し方や言葉の選び方ひとつで印象が変わります。分かりやすく丁寧に。しかし、話したくないことは器用に流して。仲間に入れるように賢く立ち回りましょう。